主に97年までのトライアンフ車のアキレス腱、ワンウェイクラッチ(以下OWC, Starter Clutchとも呼称)。ここが故障すると、エライ高い修理費が飛んでいきます。特にスポーツ系などのハイコンプ車では(エンジンの始動に力が要るため)破損が多いようです。
もちろん、これには対策部品が出ています。OWCコンポーネントが対策部品への交換前であるか、あるいは交換後であるかの見分け方としては、Haynesマニュアルによると、VIN#23707以前(3気筒エンジン全てとグレー塗装の4気筒エンジン)あるいはVIN#23681以前(ブラック塗装4気筒エンジン)であれば、対策前のパーツが使われていることになります。
さて、ひとくちにOWCの破損、と言っても二つのパターンがあります。
(1)OWCを止めているボルト(オルタネータ・ドライブシャフト)が折れる
(2)OWC内の偏形ローラーが摩耗する
という2パターンです。つまり、対策部品は、この2点に関して強度を大幅にアップしてあるわけです。
前者(1)の場合、何の変哲も無いボルトを交換するだけですので、作業も簡単で、修理費もかなり安くすみます。
後者(2)の場合は、残念ながら高い修理費が必要になります。(個々のローラーのサイズ自体が、対策前と対策後で違うため、ハウジングごと交換する必要があります。OWCハウジング自体は30,000円程度ですが、エンジンを下ろして裏からクランクケースを割らなければなりません。なお、最初期のモデルと最近のモデルは、クランクケーストップカバーが開けられるため、工賃が格段に安くなります。)
OWCの異常が起こるときの徴候は:
【Check!!】
-車体が正立した状態で、カリカリと音が出るが、2000回転を越えるとこの音が消える。
-セルを回してもエンジンが始動しない。時々ガガガッ、カリカリカリーっという音が出る。
-何回かに一度は正常に始動する。
-ある日突然少々が出る。又はだんだん症状が顕著になってくる。
-アイドリング状態で車体を右に倒すと、カリカリと音が出る
という徴候があるそうです。
実例として、いかせんべーさんのホームページにある顛末記によれば:
1.バッテリーが弱くなっているように、セルの回りが遅くなる
2.セルボタンを数回押し直すと、セルが回ってエンジンがかかる
3.そのうち、セルが滑っている「ウィ〜ン」という音が聞こえる(でも何かの拍子に掛かる)
4.しばらくすると、いくらセルボタンを押しても「ウィ〜ン」という音ばかりして、エンジンが始動できなくなる
という順番で起こったケースがあります。
また、私・寅吉はオルタネータ・ドライブシャフト折れのケースを体験しました。この場合、上記のチェックポイントの一番最初の項,「アイドリング中にカリカリカリ...と音がし、2000回転を越えると消える」という症状が出ていました。始動性に問題はありませんでした。これは、オルタネータ・ドライブシャフトが折れて飛び出し、クランクケースカバーをこすることによって発生する音です。
さて、この徴候がある場合、上記(1)(2)のいずれの例なのだろうか、ということになります。このための点検方法としては次のようなステップを踏みます。
【Check Process】
1)エンジンが10℃前後(低い方が良い)で症状が出るかどうかを確認する。(冬場ならば気温がこの程度ならばいいでしょう。暖かい季節ならば氷水などで冷やします)
↓
2)症状が出たらドライヤー、熱湯等でワンウェイクラッチ付近を温める。(金属膨張を起こさせる為、出来るだけ暖めること!)
↓
3)再度エンジン始動をトライする。
↓
4)症状が消え、エンジンが掛かればそれはOWCローラーの摩耗(上記2)と考えられます。
エンジンがかからなければ、OWCシャフトのボルトが折れている(上記1)可能性があります。
OWC破損が起こるか起こらないかは、運任せの部分もある(何年も過酷な使い方をしていても起こらない場合もある)のですが、予防策としては:
●バッテリーの状態には気を遣う(低電圧の状態で、不完全にモーターが回ると起こりやすい)
→MFバッテリーに交換するのも良い対策です。
●オイルは早めの交換をこころがける(推奨は10W-40,15W-40)
(→特に粘度が下がりすぎると、2)の症例のようにローラーの摩耗が早まるので気を付ける)
●T300系の一部は、スタンドストップ回路が電気を結構喰っているので(バッテリーの状態が弱いときなどは特に)、サイドスタンドを跳ね上げてエンジンを始動し、それからサイドスタンドをもう一度出してアイドリングさせる
●対策部品採用以前のモデルならば、ライトスイッチがあるのでライトを消して始動する
など、エンジンスタート時に予定外の負担をかけないことが重要です。
世界各国のオーナーの間でも、このことは非常に頻繁に話題に登ります。防止策としては、やはり何よりも「バッテリーとオイルの状態をベストに保つこと」が一番だと言うことで、意見の一致を見ているようです。(特に寒い季節に長く乗らなかった時などは要注意。→バッテリーが弱っていて油膜が切れてしまっている)
なお、これがもっとも重要な点ですが...OWC破損はショッキングな故障のため(フトコロ的にもダメージがデカいし)、実際以上の恐ろしいイメージを持たれているようですが、実際の発生件数はとりたてて多いわけでは無いことを追記しておきます。オーナーにとっては悪夢ですが、何軒かのディーラーさんに尋ねてみたところ、いずこも「最近は扱ったことが無い」とのことでした。
(97年式のKentaさんのデイトナでも起こったそうですが...最近のモデルでは起こった例は稀だそうです。また、02モデルからは再びクランクケーストップカバーが設けられ、「万が一」の場合にも修理費が少なくすむようになりました。これはOWCの脆弱さを表すものではなく、メンテ性の向上を狙った措置です。)