Bike of the Month -July-
Quadrant 1975

 ホンダCB750によって1970年代の始まりと同時にもたらされた大排気量時代。それに先立ち、ホンダの4気筒開発を察知したトライアンフ社−実際にはイギリスバイク会社連合と言える、NVT(ノートン・ヴィリアース・トライアンフ)−も、デニス・プーアを責任者としてCB750の対抗馬の開発を決定します。開発部長のダグ・ヘルは、スタッフと共に妥当CB750を果たすことの出来るマシンを模索しました。

 様々なテストの結果、ヘルの出した結論は、トライデントと同じくツインエンジンへの気筒追加による4気筒マシンでした。プーアも4気筒の作製は悲願であったため、これにゴーサインを出します。「クアドラント」開発の開始です。
 トライデントの欠点を踏まえ、クアドラントは単なる伝統的ツインの発展形の枠を越えたものでした。シリンダーブロックは中央から分割出来る2ブロックから構成され、クランクは長方形に近い形状、潤滑系もポンプを増設し、オイルラインも太く設定されました。

 こうして、1975年に完成したプロトタイプ4気筒は、27mmアマルコンセントリックキャブを4器備え、5速ミッション、4in2マフラー(T160の応用)を持つ987ccマシンでした。しかし、3気筒で充分、との上層部の判断により、この4気筒マシン計画は凍結されます。...現実には、完全に新しい製造ラインを作り出す企業体力は、当時のNVTには残っていなかったのです。

 では、実際のクアドラントはどのようなマシンだったのか...? 写真の車体を仕上げたレストアラーによると、(同時代の)CBにもカワサキZにも劣らないマシンだそうです。ベースとなったトライデントが212kgなのに対して、クアドラントはわずかにこれを上回る220kgに抑えられており、車体バランスも良いマシンだそうです。(さすがにフロントはダブルディスクが必要だ、ということですが。)

 歴史にifは禁物ですが、クアドラントの登場がもう少し早く、NVTに体力がある時期だとしたら...また異なるバイク史が存在していたのかもしれません。

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